三体|劉慈欣|感想・あらすじー「難しい」と聞いて身構えた人へ、どこから面白くなるか
中国発の長編SFで、世界的なベストセラーになった一冊です。📖スケールが大きく、とにかく面白いとSF ファン以外からも評価も非常に高いです。
読み始めてみたところ、序盤は中国の人名と優しくない世界観にただ事ではなさを感じました。でも、時代・場面を股に掛けるたび物語に引き込まれていき、読み終えるころには続きが気になって仕方なくなっていました。
長編SFを、腰を据えてじっくり読みたい人に、ぜひ。🐤
作品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 三体 |
| 著者名 | 劉慈欣 |
| 刊行年 | 2008年 |
| ジャンル | SF(中国SF) |
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一行本棚|作品メーター
※主観で書いています。大きいほど濃厚な読書体験となります。
- 長さ【4】 短い★★★★☆長い
- 読みやすさ【3】 単純★★★☆☆複雑
- 重さ【4】 軽い★★★★☆重い
- 余韻【3】 アッサリ★★★☆☆コッテリ
おすすめのタイミング
長編SFを、じっくり腰を据えて読みたいとき。まとまった休みに、時間を気にせず一つの世界に浸かりたいときにも。
長さ・読みやすさ・重さ・余韻で、あなたの気分に合った一冊を探せます。↓

『三体』はどんな話?(ネタバレなし)
物語は、1960年代の中国、文化大革命のさなかから始まります。
物理学者の娘・葉文潔は、父が糾弾され、命を奪われる場面を目の前で見ることになります。
そして舞台は現代へ。世界中の優れた科学者が、次々と自ら命を絶つ事件が起きていました。
ナノマテリアルの研究者・汪淼は、警察官の史強とともに、その謎を追うことになります。手がかりの一つは、「三体」という名の奇妙なVRゲームでした。
ちなみにタイトルの「三体」は、物理学の「三体問題」から来ています。三つの天体がお互いに引き合うと、その動きはほとんど予測できなくなる、という問題です。
難しい?どこから面白くなる?(ネタバレなし)
難しいという評判の多くは、序盤の読みにくさから来ていると感じました。
まず、冒頭の文化大革命の場面が重いです。歴史に詳しくなくても、読んでいてかなり堪えました。
そのあとも、過去と現在を行き来する構成で、しばらくは誰が主人公で、話がどこへ向かうのかが見えません。私はここで少し疲れました。
ただ、汪淼が中心になって謎を追い始めてからは、ぐっと読みやすくなります。特に、史強と組んで動き出してからは一気に面白くなりました。
もう一つ、知っておくといいのは、この本は一冊で完結しないということです。三部作の第1部で、物語は大きな謎を残したまま続いていきます。
序盤で止まりそうになったら、汪淼と史強がコンビになるところまで、もう少しだけ読んでみてください。
主な登場人物
| 人物 | どんな人か |
|---|---|
| 葉文潔(イエ・ウェンジエ) | 天体物理学者。文化大革命で父を失う。現代では退官した大学教授 |
| 汪淼(ワン・ミャオ) | ナノマテリアルの研究者。科学者の連続自殺の謎に巻き込まれる |
| 史強(シー・チアン) | 警察官。通称は大史(ダーシー)。粗野だが勘が鋭い |
| 丁儀(ディン・イー) | 物理学者。汪淼に、物理学の世界で起きている異変を語る |
ここから本格レビュー(ネタバレあり)
⚠️ 以下はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
あらすじ(結末まで)
文化大革命で父を失い、人間に深く絶望した葉文潔は、やがて「紅岸基地」という秘密の軍事施設で働くことになります。巨大なアンテナで宇宙に向けて信号を送る、極秘のプロジェクトでした。
ある日、彼女は宇宙からの返信を受け取ります。相手は、地球からおよそ4光年先、三つの太陽を持つ星に住む「三体文明」。三つの太陽が予測できない動きをするため、何度も滅亡を繰り返してきた文明でした。
返信には、応答するなという警告が添えられていました。それでも葉文潔は、地球の位置を知らせる返事を送ります。人類はもう自分たちでは変われない。外からの力に委ねるしかない、と考えたのです。
現代。汪淼の身にも異変が起きていました。撮った写真に謎のカウントダウンが浮かび、やがて宇宙そのものが瞬いて見えるようになったのです。
汪淼が遊んでいたVRゲーム「三体」は、三体文明の世界を体験させるためのものでした。その裏には、三体文明の到来を待ち望む人々の組織「地球三体協会」がありました。世界中に広がり、多くの知識人や科学者まで抱え込んだ巨大な組織。その頂点にいたのが葉文潔でした。
三体文明の艦隊は、すでに地球へ向かっていました。到着はおよそ400年後。それまでに人類の科学が追いつかないよう、三体文明は「智子(ソフォン)」を地球に送り込んでいました。陽子ひとつを加工して作った、超高性能のコンピュータです。智子は地球全体を見張り、物理学の実験を狂わせていました。科学者たちの自殺も、汪淼が見たカウントダウンも、すべて智子の仕業だったのです。
汪淼たちは、協会の本拠地である巨大な船を制圧する作戦に出ます。使われたのは、汪淼が研究していたナノ素材。目に見えないほど細い糸が、船を切り裂きました。
しかし、智子は止められません。三体文明は人類に、お前たちは虫けらだと告げます。
打ちのめされた汪淼と丁儀を、史強は畑へ連れ出します。そこには、空を覆うほどのイナゴの群れがいました。人類がどれだけ駆除しようとしても、虫けらは一度も負けていない。史強はそう示すのでした。
感想・考察
ここからは、読み終えて残ったことを書きます。
冒頭の文化大革命
最初の文化大革命の場面は、正直メンタルにきました。
物語序盤の舞台は1967年の北京。物理学者の葉哲泰が、大学の運動場に引き出されます。数千人の群衆の前で、相対性理論やビッグバン理論を教えたことを「反動的学術権威」として糾弾されるのです。
それでも彼は、自分の学問を曲げません。
すると紅衛兵の少女たちが、ベルトを振り上げます。金属のバックルが、頭に何度も叩きつけられる。彼はそのまま、壇上で命を落としました。
糾弾する側には、妻の姿までありました。そして娘の葉文潔は、群衆の中からその一部始終を見ていたのです。
歴史に詳しくないので恥ずかしいのですが、本当にこんな残酷で排他的な状況があったのかと、ただ驚くばかりでした。
ただ、読み終えてみると、この場面がなければ物語が成り立たないことが分かります。葉文潔が人類に絶望した理由は、すべてここにありました。
葉文潔という人物
物語の途中、葉文潔は、精神的に追い込まれていく汪淼の支えになる場面があります。
結末を知れば、彼女は人類の敵の側にいた人です。でも、途中の彼女は確かに汪淼の心の支えでした。そこがこの人物の怖さであり、深さだと思います。
読者の目線では、もともとどこか怪しい人物ではありました。だから、彼女が裏で動いていたこと自体には、それほど驚きませんでした。
ただ、あれほど大きな組織のトップにまでなっていたのは、想像の外でした。
VRゲームと「三体」の意味
「VRゲームが出てくると面白くなる」と聞いていましたが、私にとっては、ゲームの場面そのものはまあまあでした。
それでも、「三体」という言葉の意味が見えてくるところには、素直に感心しました。三つの太陽に振り回される世界という設定が、そのまま物語の根っこにつながっていたのです。
汪淼と史強のコンビ
この本で一番盛り上がったのは、汪淼と史強がコンビとして動き出してからです。
学者肌の汪淼と、粗野だけど勘の鋭い史強。正反対の二人が組むと、それまで方向の見えなかった物語に、一本の筋が通ります。
そして見どころは、追い込まれた汪淼を、史強が支える場面です。
謎の現象に精神をすり減らした汪淼を、史強は半ば強引に酒へ連れ出します。そして、史強流の荒っぽいリフレッシュの仕方を叩き込んでいく。
理屈ではなく、力技で人を立ち直らせる。人間ドラマとして最高でした。
まとめ:長い物語の、重たい入口
『三体』第1部は、一冊では完結しません。
大きな謎を解いた先に、さらに大きな脅威が待っている。そんな終わり方なので、読み終えた瞬間から続きが気になります。
序盤は少し疲れますが、汪淼と史強が動き出してからは一気に読めました。
腰を据えて読む覚悟があれば、この先の物語まで連れて行ってくれる一冊です。📘🐤
第2部の感想はこちら。↓
📌 三体Ⅱ 黒暗森林
同じく異星の存在と向き合う長編SFで、こちらは読後が明るい一冊。↓
本が燃やされる社会を描いた、体制の怖さが残るSF。↓
📌 華氏451度


