そして誰もいなくなった|感想・あらすじ|完成され尽くした、ミステリの金字塔
アガサ・クリスティが1939年に書いた、世界で最も読まれた推理小説のひとつです。📖
孤島に招かれた10人が、一人ずつ死んでいく。
犯人は島の中にいるはずなのに、全員が死んでいく。
展開が読めないまま駆け抜けて、最後の種明かし。
長すぎず、無駄もなく、完成され尽くした物語でした。
ミステリーを読んだことがない人の入門書としても、ぜひ。🐤
作品情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | そして誰もいなくなった |
| 著者名 | アガサ・クリスティ |
| 刊行年 | 1939年 |
| ジャンル | 推理小説・ミステリ |
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一行本棚|作品メーター
※主観で書いています。大きいほど濃厚な読書体験となります。
- 長さ【2】 短い★★☆☆☆長い
- 読みやすさ【2】 単純★★☆☆☆複雑
- 重さ【3】 軽い★★★☆☆重い
- 余韻【3】 アッサリ★★★☆☆コッテリ
おすすめのタイミング: ミステリーを読んでみたい時、夢中になれる一冊が欲しい時。
ここから本格レビュー(ネタバレあり)
⚠️ 以下はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
舞台はイギリス沖の孤島・兵隊島。
互いに面識のない10人の男女が謎の招待を受け、孤島の屋敷に集められます。
やがて夕食の席で、全員の過去の罪が暴かれる。そして童謡「十人の小さな兵隊さん」の歌詞通りに、一人ずつ命を落としていく。
外界と遮断された孤島で、犯人は誰なのか。逃げ場のない恐怖と疑心暗鬼の中、物語は加速していきます。
登場人物一覧|10人の罪と素性
この作品の特異な点は、招待された全員が過去に何らかの罪を犯しているということです。法的には裁かれなかった罪を抱えた10人が、一堂に集められる。
| 人物 | 素性 | 過去の罪 |
|---|---|---|
| アンソニー・マーストン | 遊び好きの青年 | 危険運転で子ども2人を死なせた |
| マッカーサー将軍 | 退役老将軍 | 妻の愛人だった部下を故意に死地へ送った |
| トーマス・ロジャース | 屋敷の執事 | 雇い主の老婦人の薬を渡さず見殺しにした主犯 |
| エセル・ロジャース | 屋敷の家政婦 | 夫の犯行に加担、罪悪感に苦しみ続けた |
| エミリー・ブレント | 厳格な老婦人 | 使用人を追い出し、自殺に追い込んだ |
| ウォーグレイヴ判事 | 引退した判事 | 無実の被告に死刑判決を下した |
| ヴェラ・クレイソーン | 元家庭教師 | 教え子の少年を溺死させた |
| フィリップ・ロンバード | 冒険家 | アフリカで原住民21人を見捨てた |
| ブロア | 元警部 | 冤罪を作り、無実の男を投獄した |
| アームストロング医師 | 医師 | 酔った状態で手術し、患者を死なせた |
主人公不在の、おどろおどろしさ
この作品の最大の特徴は、頼れる主人公がいないことです。
普通のミステリは探偵や主人公の視点で謎を追うから、読者に「この人を信じて読もう」という拠り所がある。でもこの作品は10人全員が容疑者であり、全員が被害者候補。読者はずっと宙吊りのまま読み進めることになります。
そのおどろおどろしさが、1939年の作品とは思えないほど斬新でした。
クローズドサークルの原点
孤島・密室・全員が容疑者という構造、これをここまで完成させた作品はそれまでありませんでした。
後のミステリー作品に多大な影響を与え、日本のミステリーにも多くこの構造が引き継がれています。童謡を見立て殺人に使うという発明も同様で、この作品が原点のひとつです。「ミステリーの金字塔」と呼ばれる理由が、読んでいてよく分かりました。
同じクリスティ作品でも、雪に閉ざされた寝台車を舞台にしたオリエント急行の殺人は、別の形でクローズドサークルを極めた一作。あわせて読むと、クリスティの構造美がより立体的に見えてきます。
意表を突かれた、でも納得した
読み進めながら「この人なら信頼できそう」と思わせる人物がいます。
その人物が犯人だったことは、意表を突かれたようで、でも読み返すと納得でもありました。
ただ一つ言えるのは、その犯行は「正義」ではないということです。
病的な衝動に従って動き、最後は自分も死を選んだ。
「正義」と呼んでしまうと、この作品の怖さが半減する気がしました。
どうなるラスト!?からのネタバラシ
最後の種明かしで全ての謎が回収され、読後はまあまあスッキリしました。
ただ「完璧に解決した」という感覚より、「整然と終わった」という印象に近い。
それがこの作品の美しさでもあり、少し不気味なところでもあります。
綺麗にまとまりすぎているくらい整然とした物語。
だからこそ80年以上読み継がれているんだと思います。📘
📌 アガサ・クリスティについてもっと知りたい方はこちら。アガサ・クリスティを掘り下げてみた
📌 同じクリスティの傑作、寝台車版クローズドサークル。オリエント急行の殺人
📌 30分で読める、もう一つの不気味な短編ミステリ。人間椅子(江戸川乱歩)

