俺たちの箱根駅伝|池井戸潤|感想・あらすじー走る者と、映す者の物語【2026秋ドラマ化】
箱根駅伝を、池井戸潤が一冊にしました。📖
舞台は二つ。箱根を走る大学生と、その姿を中継で届けるテレビ局。
走る者と、映す者。両方の視点から「箱根」を描く群像劇です。
私はスポーツものとして手に取りましたが、池井戸潤さんらしい仕事描写にも、しっかり引き込まれました。
友情、努力、勝利。結末がなんとなく読めても、襷が繋がる瞬間にはぐっときます。
2026年10月にドラマ化も予定されています。
まっすぐ熱くなりたい人に、ぜひ。🐤📖
作品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 俺たちの箱根駅伝(上・下) |
| 著者名 | 池井戸潤 |
| 刊行年 | 2024年(文藝春秋) |
| ジャンル | スポーツ小説/お仕事小説 |
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一行本棚|作品メーター
※主観で書いています。大きいほど濃厚な読書体験となります。
- 長さ【4】 短い★★★★☆長い
- 読みやすさ【2】 単純★★☆☆☆複雑
- 重さ【3】 軽い★★★☆☆重い
- 余韻【3】 アッサリ★★★☆☆コッテリ
おすすめのタイミング
年末年始、腰を据えて長編に浸りたいとき。まっすぐ熱くなりたいとき。スポーツものでぐっと泣きたいとき。
舞台は箱根駅伝。主役は、走る者と映す者
舞台は、お正月の箱根駅伝。学生たちが2日間で襷を繋ぐ、あの大学駅伝です。
物語の主役は、大きく二組。
一つは、箱根を走る大学生ランナーたち。古豪・明誠学院大学を入り口に、予選会で敗れた大学の選手を集めた「関東学生連合」が箱根駅伝に挑みます。
もう一つは、その2日間を生中継するテレビ局のスタッフたち。
走る側と、映す側。この二つの現場が、交互に描かれていきます。
駅伝のルールに詳しくなくても大丈夫でした。仲間へ襷を繋ぐ、という一点さえ分かれば、熱はちゃんと伝わってきます。
ここから本格レビュー(ネタバレあり)
⚠️ 以下はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
物語は、3年ぶりの箱根復帰を狙う古豪・明誠学院大学から始まります。
故障から復帰した主将・青葉隼斗にとって、この予選会が最後の挑戦でした。
けれど、明誠は予選会で敗退。チームの夢は、ここで一度潰えます。
ところが青葉は、ただ一人「関東学生連合」に選ばれます。予選で敗れた大学から集められた、寄せ集めの選抜チームです。
監督を務めるのは、明誠の新監督・甲斐真人。一流商社で働いていましたが、母校の新監督に就任したばかりの人物です。ここから、寄せ集めのチームの挑戦が始まります。
一方、その箱根を中継する大日テレビでも、チーフプロデューサーの徳重が無理難題を抱えていました。
走る側と、映す側。二つの現場が、同じ箱根に向かって動き出します。
主な登場人物
| 人物 | どんな人か |
|---|---|
| 青葉隼斗 | 明誠学院大学の主将・4年。予選会で敗れ、ただ一人、関東学生連合に選ばれます |
| 甲斐真人 | 明誠学院OBの新監督で、名ランナーとして箱根を走った経歴を持ちます。一流商社から母校に転じ、連合の監督も兼ねます |
| 徳重亮 | 大日テレビのチーフプロデューサー。中継サイドの主人公。編成局長からの難題を背負います |
| 辛島文三 | 大日テレビの古参アナウンサー。気難しいが、取材は一流 |
寄せ集めのチームが、ひとつになっていく
予選会で敗れた大学から集められた「関東学生連合」。その寄せ集めのチームが箱根を走り切るまでの歩みそのものが、主題です。
率いるのは、新監督の甲斐真人。その甲斐が、チームに「箱根で3位以上」という目標を掲げます。
参考記録扱いの、急造チーム。長年の実績を積み重ねてきた強豪校に比べれば、誰が見ても無謀な目標です。
案の定、最初のチームはバラバラでした。
自分の大学は予選で負けた。連合の記録は参考記録で、公式には残らない。だったら何のために本気を出すのか——そんな温度差を抱えた選手たちが、同じチームに集められます。
周りの目も冷たい。ライバル校の監督やOB、記者までもが「寄せ集めに何ができる」と連合を見下し、甲斐に退任を迫る声まで上がります。
でも、ここからがこの本の真骨頂です。
噛み合わなかった選手たちが、少しずつ手を取り合っていく。本選を走る10人が発表される場面では、全員が「人生で初めての箱根」を走ることが決まります。その緊張と高揚が、こちらにも伝わってきました。
寄せ集めだったはずのチームが、いつの間にか「俺たちの箱根駅伝」になっている。
そのスタートラインに立つまでの過程が、私はたまらなく熱かったです。
テレビ局側は、プロデューサー徳重の視点で進む
一方、テレビ局側はチーフプロデューサーの徳重亮を中心に、物語が展開されます。
総勢1,000人を超えるスタッフを束ね、2日間の生中継を成立させる。そこには、走る選手たちとはまた違う種類の戦いがありました。編成局長からの無理難題、現場の事情、刻一刻と動くレース。中継という仕事の裏側が、みっちり描かれます。
そして、その現場でひときわ光るのが、古参アナウンサーの辛島文三です。
気難しくて、周りからは敬遠されている。馴れ合いも半端な仕事も嫌う、職人気質の人です。
この辛島が、すごかった。
連合は「どうせ参考記録」「最下位だろう」と、ほとんどのスタッフから取材すらされていませんでした。そんな中で、ただ一人、辛島だけが連合の選手一人ひとりを取材して回っていたのです。
オマケ扱いされたチームを、彼だけがリスペクトしていた。
そして本番、辛島が集めていた細かな情報が、徳重たちの中継を救います。
選手の懐に一瞬で入っていくその取材は、まさに職人でした。
読み終えて、嫌いになる人が一人もいない人物だな、と思いました。
ちなみに、中継では芦ノ湖も大手町も地名で呼ぶのに、「小涌園前」だけはホテルの名前で呼ばれます。そこには、かつてテレビ局が窮地を救われた実話があるそうです。こういう舞台裏の手触りも、この本の楽しみでした。
個人的に一番好きだったのは、倉科弾
私の完全な好みですが、
読んでいて一番熱かったのは、連合のメンバーの倉科弾でした。(全員熱いのは前提です)
山王大学の2年生。トレーニングの場面では、素直でおおらかな、まっすぐな後輩です。武蔵野農業大学の猪又丈とのコンビも、見ていて気持ちがよかった。
それが、本番で一変します。
苦しいはずの後半、前を行く背中を一つ、また一つと捉えていく。ゾーンとも言われる状態に覚醒し、順位が動くたびにこちらの息まで上がってきました。
単独では箱根に出られない大学の選手が、晴れ舞台でぐいぐい押し上げていく。その雑草魂に、すっかり持っていかれました。
結末が読めても、襷は熱い
スポーツものの結末は、だいたい読めますが、それでも、効いてしまう。
その理由が、この本を読んで少し腑に落ちました。
襷は、仲間から仲間へ、文字どおり手で渡されていきます。気持ちが、布一枚に乗って次へ渡っていく。題材そのものが、感動と握手しているのです。
負けた者、寄せ集めだった者たちが、それでも走り切ろうとする。「敗者の物語にこそ、希望がある」。著者が込めたこのテーマが、連合チームの歩みに、まっすぐ重なっていました。
ひねった読み方より、まっすぐ受け止めたい一冊でした。📘🐤
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