一行の本棚

青天|若林正恭|感想・あらすじー挫折を飲み込んで進む、王道の再起【直木賞候補】

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オードリー若林正恭さんの、初めての小説です。

エッセイの印象が強い方ですが、本作『青天』は第175回直木賞の候補に選ばれました。お笑い芸人としては初の候補入りだそうです。

アメフトは詳しくなく、話題になっていたからという理由で読み始めたのですが。。。読み終わり大満足!

挫折を飲み込んで進んでいく、王道の再起。読み終えて、ただただ気持ちよかったです。何かに本気で打ち込みたい人、最近うまくいっていない人にこそ、おすすめしたい一冊です。🐤📖

作品情報

項目内容
作品名青天(あおてん)
著者名若林正恭
刊行年2026年(文藝春秋)
ジャンル青春小説/スポーツ(アメリカンフットボール)

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作品メーター

  • 長さ  :★★☆☆☆【2】
  • 読みやすさ:★★★★☆【4】
  • 重さ  :★★☆☆☆【2】
  • 余韻  :★★★☆☆【3】

おすすめのタイミング

最近うまくいっていないとき。もう一度、何かに本気で向き合いたくなったとき。難しいことを考えず、まっすぐ熱くなりたいとき。


「青天」ってどういう意味? アメフトを知らなくても読める?

タイトルの「青天(アオテン)」は、アメフトの用語です。

激しいタックルを受けて、選手が仰向けに倒される。最も屈辱的な瞬間。仰向けに倒れた選手の視界には、ただ青い空だけが広がっている。そこから「青天」と呼ばれるようになったといわれています。

本作はアメフトを題材にしているぶん、専門用語は多めです。文章も、ぶつかり合う競技そのままに、ところどころ激しさがあります。

ただ、ここがこの本のすごいところでした。

用語をすべて理解できなくても、面白いんです。私は昔読んだ漫画のおかげで、少し助けられましたが、それでも分からない言葉はありました。それでも置いていかれない。アメフトに詳しくない人でも、安心して手に取れる一冊だと思います。

ここから本格レビュー

⚠️ 以下はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

舞台は1999年の東京です。主人公は、総大三高のアメフト部に所属する「アリ」こと中村昴。チームは万年2回戦どまりです。高3の引退大会では、相手校の練習を隠し撮りまでして臨みながら、強豪・遼西学園に打ち砕かれます。その試合で、相手から青天を受けます。引退後、周りが受験に向かうなか、アリは勉強にも身が入らず、不良になりきる覚悟もないまま、宙ぶらりんの日々を過ごしていきます。

主な登場人物

人物どんな人か
アリ(中村昴)主人公。弱小アメフト部の一員。負けと不甲斐なさを抱えながら、もう一度立ち上がろうともがきます。
チョモ(高山)後輩で、のちの新キャプテン。立ち止まっていたアリに声をかけてくれる存在です。
河瀬アリの同級生。アメフトIQが高く、再起の途中で頼れる役回りになります。

立ち上がる前の、宙ぶらりんな時間がヒリつく

引退後のアリは、すぐには立ち直れません。

受験に向かう周りを横目に、不良になりきる覚悟もないまま、どっちつかずの日々を過ごします。

このあたりを読んでいる間、私は少しヒリつきました。本人もどこか居心地が悪そうで、その空気がこちらにも伝わってくるのです。だからこそ、アリがそういう時間から少しずつ離れていく気配が見えてきたとき、私はようやく穏やかな気持ちになれました。立ち上がる前に、うまくいかない時間をきちんと描いてくれる。その誠実さが、後の再起を信じさせてくれたのだと思います。

負けた先で、努力が習慣に変わっていく

中盤からの再起のプロセスが、この本で私が一番好きなところです。

挫折を飲み込んで、努力する。その努力がやがて習慣になり、習慣が実力に変わっていく。この積み上がっていく流れそのものが、たまらなく気持ちいいのです。

しかも、きれいごとで均されてはいません。立ち直りはじめてからも、すんなりとはいかない場面が挟まれます。順調なだけの再起ではない。だから、積み上がっていく一つひとつが信じられるのだと、私は感じました。

一人でもやろうと決めた人の隣に、人が増えていく

もう一度やろう、一人でもやろう。アリがそう覚悟を決める——その瞬間が、もうすでに熱いです。

さらに、その覚悟に呼応するように、声をかけてくれる人や、隣に立ってくれる人が現れます。一人で決めたのに、気づけば一人じゃなかった。ここが、本当に最高でした。

ただ、これがリアルでもありました。漫画なら、全国制覇をめざして部員全員が遮二無二に努力するのかもしれません。でも本作で集まるのは、ほんの数人。この身の丈のサイズ感が、かえって信じられました。

青天というタイトルが、読み終えてもう一度刺さる【感想】

物語の序盤、アリは因縁の相手に倒され、努力も存在も否定されたような屈辱を味わう。そこから、この物語は走り出します。

そして「青天」という言葉は、読み進めるうちに、序盤とは少し違う表情を見せはじめます。倒される側だった言葉が、どこへ向かっていくのか。そこは、ぜひ自分の目で確かめてほしいところです。

ただ一つだけ——青天されるというのは、相手との実力差や、足りないものがあるということ。青天するというのは、努力の証です。この二つの間にこそ、物語がある。タイトルが、読み終えてからもう一度、静かに効いてきました。

自由とは何か、といったテーマを読み取ることもできるのかもしれません。

でも私は、そういう読み方はいったん横に置いておきました。難しいことを考えず、まっすぐ熱くなれる読書体験をさせてもらって、大満足です。

アメフトに詳しくなくても大丈夫。何かに本気で打ち込みたい人に、気軽に手に取ってほしい一冊です。📘🐤

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